論文紹介:インフリキシマブはIBD患者におけるファイザー/バイオンテック社製ワクチンとアストラゼネカ社製ワクチンに対する免疫原性の減弱に関与する

こんにちは、Dr.シェパードです。

毎週木曜日は論文紹介の日にしようと考えており、第一弾をスタートとします!

記念すべき第一弾はIBD患者さんや膠原病科でも使う機会のあるインフリキシマブとワクチンの関係の内容です。

Gutに2021年4月26日に掲載された論文で英国からの報告です(Kennedy NA. Gut. 2021; 0: 1-10)。

Dr.シェパード

木曜日は論文の日!自己研鑽になるのでがんばります・・・

目次

ABSTRACT

目的

2回目のSARS-CoV-2ワクチンが遅れると最大限の免疫効果が得られないことがわかっている。インフリキシマブで治療中のIBD患者において1回目のワクチン後に血清学的反応が減弱されるのかについて調べた。

デザイン

抗体濃度や抗体の陽転化率をインフリキシマブ群(n=865)とベドリズマブ群(n=428)とで行った。1次評価項目としては抗SARS-CoV-2 スパイク(s)抗体濃度を1回目のワクチン摂取から3-10週間で測定した。2次評価項目は抗体陽転化率(cut off 15IU)と抗体反応を過去の感染または2回目のワクチン接種までフォローした。

結果

抗SARS-CoV-2スパイク蛋白抗体濃度はファイザー/バイオンテック社製およびアストラゼネカ製のワクチン共にベドリズマブ群と比較してインフリキシマブ群で低かった。多変量解析でも同様の結果であり、インフリキシマブとベドリズマブ両群において60歳以上、免疫調整薬使用、クローン病、喫煙はより低くなることに関与し、非白人ではより抗体価が高い傾向にあった。抗体陽転化率はSARS-CoV-2既感染と2回目のファイザー/バイオンテック社製ワクチン接種でより高い傾向にあった

結論

インフリキシマブはファイザー/バイオンテック社製ワクチンとアストラゼネカ社製ワクチン共に免疫原性の減弱に関与している。SARS-CoV-2既感染での接種と2回目のファイザー/バイオンテック社製ワクチン接種は多くの患者で抗体陽転化が見られた。インフリキシマブで治療中の患者において2回目接種の遅延は避けるべきである。

ポイント

まず事前知識として、過去の様々なワクチンにおいてTNF-α阻害薬は免疫原性を減弱することが報告されていました。また免疫調整薬に関しても同様に報告がありました。免疫調整薬や免疫抑制剤については名前の通りで免疫を抑える方向に働くことから抗体の産生抑制になることは想像がつくかと思います。TNF-α阻害がなぜ、免疫を減弱するのでしょうか。

本論文のDiscussionに記載があり、TNF(Tumor Neclosis Factor)は宿主の様々な免疫反応に関わっている可能性があり、T細胞依存性の抗体産生にも関わっていると見られています。TNFを遺伝的に除去するとB細胞のリンパ濾胞が破壊され抗原誘発性の抗体産生が阻害されることがわかっている(原著論文12)。とのことでした。

またこの論文はイギリスにおいてワクチンの供給が追いつかない背景と1回接種でもある程度の効果が見られることやずらすことで抗体価をより長期に維持できるのではないかといった話もあり、そんな方針に待ったをかける目的の論文でした。

多変量解析で得られた知見も興味深く、60歳以上、喫煙者、クローン病患者、免疫調整薬併用が抗体濃度がより低下することに、非白人であることが抗体濃度がより高くなることに関与するというのは当てはまる方がいそうですね。

終わりに

民間接種や職域接種が開始される見込みとなっており、接種対象がどんどん広がっていく中で質問される機会も増えてくることが予想されます。特に潰瘍性大腸炎やクローン病などでインフリキシマブを投与中の方が気になる情報となり外来での情報提供に役立つ論文でした。

結局は2回接種のワクチンをしっかりと投与期間も守り接種することが重要であるということです。

ワクチン接種が進み、不自由のないあの時代がまた到来することを願いましょう。

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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