肝臓関連の血液検査まとめ

こんにちは、Dr.シェパードです。

ひとくちに肝臓関連の検査と言っても意外と多岐に渡ります。

実臨床で肝酵素上昇の鑑別を行う際に自身でも測定している事が多く、備忘録として記載しておきます。

目次

ポイント

  • 肝細胞障害・壊死を反映する→AST・ALT・LD・鉄/フェリチン、総胆汁酸
  • 肝細胞の合成機能障害を反映する→Alb、凝固因子、ChE、プレアルブミン、レチノール結合蛋白
  • 肝線維化マーカー→ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、Ⅲ型プロコラーゲン(N末端)ペプチド、Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)
  • 肝障害に伴う血清蛋白成分変化を反映する→γグロブリン
  • 胆汁うっ滞を反映する→ALP、γ-GTP、D-Bil
  • その他:ICG試験、アシアロシンチグラフィ

AST/ALT

肝小葉の中心静脈域にASTが多く、門脈域にALTが多く存在するため、障害部位により上昇しやすさが変化する。

  • AST<ALT:主に門脈域。ウイルス性肝炎、急性肝炎回復期、脂肪肝
  • AST>ALT:主に中心静脈域。アルコール性肝障害、うっ血肝
  • ASTとALT共に上昇:肝全体。肝硬変、急性肝炎極期、慢性肝炎急性増悪、ショック
  • ASTとALTが著明に上昇(1000IU/l以上):急性肝炎・劇症肝炎、肝梗塞、ショックリバー、重症心不全

LD

アイソザイムがあり臓器により異なる。詳細を調べるには検査をするが外注検査となることが多いかも。

  • LD1:心筋と赤血球→心筋梗塞、溶血性貧血
  • LD2:網内系細胞(血液)→白血病、悪性リンパ腫
  • LD3:肺→肺梗塞
  • LD4:腎臓→腎梗塞
  • LD5:肝臓、骨格筋→急性・慢性肝炎、肝細胞癌、筋ジストロフィー

D-Bil(直接ビリルビン)とI-Bil(間接ビリルビン)

赤血球が脾臓などで寿命を迎えて壊されでてきた間接ビリルビンが、肝臓でグルクロン酸抱合を受けて直接ビリルビンとなり胆汁に排泄されるため、胆汁排泄障害やトランスポーター異常で上昇する。

ALB(アルブミン)

アルブミンは肝細胞で合成されるタンパク質であり、肝機能を反映している。肝硬変の重症度判定のChild-Pugh分類や肝障害度分類に用いる。

凝固因子(特にPT)

Ⅲ因子とⅧ因子以外はすべて肝臓で合成される。Ⅲ因子は線維芽細胞や平滑筋細胞、Ⅷ因子(やvon Willebrand因子)は血管内皮細胞から作られる。

Ⅶ因子の半減期は非常に短く(3-5時間)、肝機能を反映しており関連するPTが重要となる。Child-Pugh分類、肝障害度分類、急性肝不全・劇症肝炎の移植判定などに用いられる。

コリンエステラーゼ(ChE)

肝細胞で合成される酵素。高栄養状態で上昇し、低栄養状態で低下する。他に肝障害や有機リン中毒などで低下する。

ヒアルロン酸・Ⅳ型コラーゲン・Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)

ヒアルロン酸は結合組織に含まれ、肝類洞内皮細胞で異化されるため肝線維化に伴う内皮細胞障害で処理できなくなるため上昇する。Ⅳ型コラーゲンは基底膜の成分で正常肝組織には存在しないが肝線維化により内皮細胞の毛細血管化により基底膜が構成され上昇する。M2BPGiは肝線維化によりタンパク質上の糖鎖構造が変化したもので肝線維化の進展も検出するマーカー。ヒアルロン酸やⅣ型コラーゲンなどは他疾患の要素が影響することがあるのに対して、M2BPGiは影響を受けず高感度かつ特異的な血液検査であり、線維化の状態もわかる有用な検査。

γグロブリン

肝疾患で上昇を認める事がある。

  • IgG:B・C型慢性活動性肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎(AIH)
  • IgM:A型急性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(PBC)
  • IgA:アルコール性肝硬変

ALP(アルカリホスファターゼ)

胆道系障害の指標となるが、こちらもアイソザイムがあり臓器により異なる。こちらのアイソザイムも外注だと思います。

  • ALP1:胆管→閉塞性黄疸など胆道閉塞を反映
  • ALP2:毛細血管→肝炎や肝硬変、薬剤性障害などを反映
  • ALP3:骨→骨病変、小児、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症
  • ALP4:胎盤→妊娠後半、末期がん(肺がん)
  • ALP5:小腸→潰瘍性大腸炎、腎不全、肝硬変、糖尿病、遺伝性

γ-GTP

主に腎臓、膵臓、肝臓などに存在するが胆汁分泌障害と肝細胞障害時に上昇したり(胆石やがん)、ミクロソーム機能亢進状態(アルコールや薬剤など)で上昇する。

ICG(インドシアニングリーン)試験

ICGはリポ蛋白と結合して肝臓に運ばれ肝細胞に摂取された後、胆汁中にそのまま排泄され、腎臓からの排泄が殆どないため肝機能を反映する。

検査方法:早朝空腹時にICG(インドシアニングリーン)を0.5mg/kg静注し、15分後の体内残存率により算出する。

血中ビリルビンが3.0mg/dlを超えるとICGが競合して肝臓への到着が遅れるため正確に測定できない

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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