イベルメクチンがSARS-CoV-2に有効とする根拠論文のRCTにデータねつ造と盗用であったことから撤回された

こんにちはDr.シェパードです。

日本で開発された薬剤であることなどから一部の方々から熱望されているイベルメクチンのSARS-CoV-2への治療薬としての使用について、根拠論文の一つが撤回されました。

イベルメクチンに関してはWHOは臨床試験でのみの使用を、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)は使用を控えるように推奨しており日本でも同様です。

根拠論文となったRCT(ランダム化比較試験)の結果においてデータの捏造、文章も盗作ということでした。

↓解説記事はこちら

目次

そもそもイベルメクチンとは

イベルメクチンは日本の北里大学の大村 智先生が研究、有効成分の抽出に成功し、その後製薬化されたもので寄生虫などへの優れた効果の割にヒトへの毒性が低いことも優れています。

抗寄生虫薬として非常に高い効果をもっており、すでにアフリカのオンコセルカ症やフィラリア症の象皮症など全世界的な寄生虫への治療効果を認めており、ノーベル医学生理学賞を受賞しています

日本では沖縄の糞線虫を始めとした寄生虫や疥癬というヒゼンダニが媒介する病気などに用いられており、治療薬としての地位はゆるぎないものです。

新型コロナウイルス感染症の流行中に治療薬を全世界で躍起になって探す中で抗マラリア薬のクロロキンなども出てきましたが、このイベルメクチンも出てきました。

人間への毒性が低いと言っても副作用がまったくないわけではなく、皮膚症状や肝障害、下痢などの副作用があります。

今回の問題点

イベルメクチンはインドやアフリカ、ラテンアメリカなどで効いているという話が、イベルメクチンを推す方々から話がでますが、薬剤を治療薬として適応させるためには様々なbias、交絡因子を除いて正確な評価・試験を踏んだ上で適応が決まります。そこで重要となる研究のひとつがランダム化比較試験になり、正確に評価された試験結果でいい結果が出ればそれは強い証拠になりますが、今回は非常に問題となる捏造などがあったことから撤回され、治療薬として使うに値する十分な証拠の一つが崩れ去りました。

その内容を挙げると

  1. 実際の結果と論文に掲載されたデータが異なる(イベルメクチン群の死亡数を少なく捏造し、評価項目でも捏造しており最大で10%以上も誤差があったものもある)
  2. RCTだが対照群がICU患者でイベルメクチン群は病棟とICUが混在しており無作為化されていない可能性あり
  3. 患者間のデータをまるごとコピーしており綴りが間違っていたりした
  4. 標準偏差が捏造
  5. 死亡患者の10人以上が重複
  6. 論文の序文が他の研究やプレスリリースなど様々なソースからコピーされていた。
  7. 試験開始の倫理承認を得る前から研究をスタートしていた可能性があり、対象としていた患者の年齢も18歳からという記載に対して実際には14歳からであった可能性がある。

終わりに

あまりにひどい内容で、言葉を失いました。

そしてイベルメクチンを有効とする方々の根拠論文の一つでもあったことから、撤回されたことで現時点では有効性に疑問が残るという結論で間違いは無いのでしょう。

北里大学病院主導で国内の治験に取り組んでいたり、世界的にも臨床試験を行ったりしていくでしょうから、今後の報告に期待がかかります。

なにもイベルメクチンを我々が敵視しているわけではなく、適切な手順を踏んで効果があると分かれば一つでも治療に活かしたいと切望しています。現状で使用している治療なども根拠があるから副作用ももちろん想定されますが行っています。根拠が薄いのに治療として行い、重篤な副作用を起こし、結局効果はなかったという話になることが一番最悪の事態で、人を病気から治すことを生業にしている我々の恐れることです。

そして治療薬ももちろん大事ですが、ワクチンも予防医学の観点から重要になります。詳しくは下記で紹介しています。供給不足の問題もありますが、今までの日常を取り戻すために一人ひとりの協力が必要になります。よろしくおねがいします。

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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