論文紹介:若年性大腸癌のリスクはなにか?

こんにちは、Dr.シェパードです。

本日は木曜日で論文の日!最近はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)関連に偏っていましたので久しぶりに消化器の内容を取り上げます。

今回は米国からの報告で若年性大腸がんの発症要因について、遺伝的リスク以外に何があるのか報告があったため紹介します。

30代くらいの方も含めた若年性大腸がんの方を年間数例見ていたので自身も気になるところで調べていたところ見つけました。

「JNCI Cancer Spectrum」に2021年5月20日に掲載されていました。

目次

Abstract

Background

早期発症(50歳未満)の大腸がん(CRC)の発生率が多くの国で増加している。そのため、早期発症のCRCにおける従来のCRC危険因子の役割を明らかにすることは、高い優先度がある。我々が調べたのは遅発性CRCに関連する危険因子が早発性CRCにも関連するかどうか、また解剖学的部位によって関連パターンが異なるかどうかを調べた。

Methods

13の集団ベースの研究から得られたデータを用いて以下の研究を行った。50歳未満のCRC症例3767例と対照4049例、50歳以上のCRC症例23 437例と対照35 311例を調査した。多変量および多項ロジスティック回帰を用いて、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定し、CRCとの関連性を評価した。(CRCの早期発症と危険因子との関連性を解剖学的部位別に評価した。

Results

早期発症のCRCは、非ステロイド性抗炎症薬を定期的に使用していない(OR ¼ 1.43, 95% CI ¼ 1.21 to 1.6)、赤身肉の摂取量が多い(OR ¼ 1.10, 95% CI ¼ 1.04~1.16)、教育水準が低い(OR ¼ 1.10, 95% CI ¼ 1.04~1.16)、禁酒(OR ¼ 1.23、95%CI ¼ 1.08~1.39)、重度のアルコール使用(OR ¼ 1.25、95%CI ¼ 1.04~1.50)の順で関連していた。早期発症の要因として早期発症のCRCでは後期発症のCRCと比較して、より大きく寄与する因子はなかった。解剖学的部位別にリスクを評価すると食物繊維の摂取量が少ないと、結腸がんよりも直腸がん(OR¼1.30、95%CI¼1.14~1.48)との関連が強かった(OR¼1.14、95%CI¼1.02~1.27、P¼.04)。

Conclusion

今回の大規模な研究では、早期発症のCRCに関連するいくつかの非遺伝的危険因子を同定し、最もリスクの高い人を対象とするための基盤を提供することができた。これは、増加するCRCの負担を軽減するために不可欠である。

ひとこと

赤身肉摂取や食物繊維などはよく言われるところでアルコール摂取量が多いことについても聞いたことがありましたが、むしろ禁酒も早期発症リスクとなるのですね。また喫煙や肥満なども比較されているのですが有意差は出ていません。有意差が出ていませんが食物繊維量やカルシウム摂取が少ないことも関連しそうなほどの結果で、フルーツや野菜摂取量不足、加工肉を多く食べることはあまり関連していないようでした。

この研究結果はなかなかおもしろい結果ですね、お若い方には日常生活で少しづつ気をつけていくことでもしかしたら若年発症しないように出来るかもしれません。

こちらはあくまで非遺伝的要因での関連ですので家族歴がある方は早めの大腸カメラ検査をおすすめします。ご家族に大腸がんの方が複数いれば30代でも一度検討が必要かもしれませんし、これらの要因が思い当たる方も検討いただいてもいいでしょう(あくまで個人の意見です)。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

コメント

コメントする

目次