論文紹介: 妊婦に対するファイザー/バイオンテック社製ワクチンの安全性について JAMA

こんにちは、Dr.シェパード (@dr-shepherd-ns-rabbit) です。

今回は新型コロナウイルス関連として、2021年7月12日に発表されたJAMAの論文(Goldshtein I. JAMA. 2021 Jul 12)を紹介します。

以前に記載した新型コロナワクチン関連の記事で追記していますが、日本産婦人科学会からもワクチン接種は問題ないと提起されています。

その裏付けの一つとなる論文でイスラエルからの報告です。

目次

Abstract

Importance

第3相試験では除外されていたため、ファイザー/バイオンテック社製ワクチン(BNT162b2)の妊婦への有効性と安全性についてのデータは不足していた。

Objective

妊婦におけるBNT162b2の接種とSARS-CoV-2感染の関連を評価する。

Design, Setting, and Participants

本研究はイスラエルの大規模な国営医療機関の妊娠登録内で行われた後方視的コホート研究。2020年12月19日から2021年2月28日までに初回接種を受けた妊婦とワクチン接種を受けていない妊婦を年齢、妊娠期間、居住地域、人口サブグループ、妊娠期間、インフルエンザ予防接種状況で1対1にマッチさせた。追跡調査は2021年4月11日に終了した。

Exposures

BNT162b2 mRNAワクチンの接種を受けたことで定義した。比較性を維持するためワクチン接種を受けた被曝露女性はマッチさせたペアとともに曝露から10日後に打ち切られた。

Main Outcomes and Measures

主要アウトカムは、初回ワクチン接種後28日以上経過した時点でPCRで検査されたSARS-CoV-2感染である。

Results

このコホート研究にはワクチン接種を受けた女性7530人とマッチさせたワクチン未摂取の女性7530人が含まれ、それぞれ46%と33%が第2および第3の妊娠期間中であり、平均年齢は31.1歳(SD, 4.9歳)であった。主要アウトカムの追跡調査の中央値は37日(四分位範囲,21~54日,範囲,0~70日)であった。SARS-CoV-2感染者は、ワクチン接種群で118人、非接種群で202人であった。感染した女性のうち、症状があったのは、ワクチン接種群では105人中88人(83.8%)、ワクチン未接種群では179人中149人(83.2%)であった(P≧0.99)。28~70日のフォローアップ期間中の感染症は、ワクチン接種群で10件、非接種群で46件であった。感染症のハザードは、ワクチン接種群と非接種群でそれぞれ 0.33%と 1.64%であり、絶対的な差は 1.31%(95% CI, 0.89%-1.74%)、調整後のハザード比は 0.22%(95% CI, 0.11-0.43)であった。ワクチン関連の有害事象は68名の患者から報告され、重篤なものはなかった。最も多く報告された症状は、頭痛(n=10,0.1%)、全身の脱力感(n=8,0.1%)、特定不能の痛み(n=6,0.1%未満)、腹痛(n=5,0.1%未満)であった。

Conclusions and Relevance

妊婦を対象としたこの後方視的コホート研究でBNT162b2 mRNAワクチンの接種は、ワクチンを接種しない場合と比較してSARS-CoV-2感染のリスクを有意に低下させることが示された。この研究結果の解釈は、観察的デザインによって制限されている。

ひとこと

妊婦に対するmRNAワクチンの安全性に関する論文は、もう一つNEJM 2021年6月17日に報告(Shimabukuro TT. NEJM. 2021 Jun 17)されており、こちらはアメリカからの報告でモデルナ社製ワクチンも含まれております。こちらでは流産や早産、胎児発育遅延、先天奇形、新生児死亡のリスクはワクチン接種をしていない妊婦と変わらなかったという結果でした。また、副反応の頻度も変わらないという結果は本研究とも同様です。

総じて妊婦さんにも安全に接種できると現時点では言えるでしょう。もちろん気になるようであれば器官形成期(妊娠12週まで)を避けていただくのがいいでしょうし、主治医の先生と相談を必ずしましょう。

こちらにも一部で妊婦さんや子供に対するワクチンについて言及しています。

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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