イベルメクチンをめぐる最近の情報などをわかりやすくまとめました:海外では偽物や家畜用まで流通、飲む量わからず副作用で死亡までありうる

こんにちは、Dr.シェパード (@dr-shepherd-ns-rabbit) です。

前回イベルメクチンに関連する論文の捏造が発覚し、撤回された記事は多くの方が見ていただき、非常に興味関心が向いている情報だと実感しました。

また一部では結構な激論となっており、触れるのもやや悩ましいと思う状況ですが、最新情報をアップしないのも一度触れたからには不真面目な態度だと思い、今回投稿します。

Dr.シェパード

木曜日の論文の日に代えて紹介していきます。先日もイベルメクチンを処方してくれないかと相談されたこともありますが、以下の内容のように推奨されないことをお伝えしました。

目次

イベルメクチンをめぐるこれまでの情報まとめ

イベルメクチンについてのこれまでの世界の臨床研究結果について峰 宗太郎先生がわかりやすくまとめていただいてます。

右下のデータねつ造による撤回が、当ブログでも紹介した内容になります。

最近の話題

大規模臨床試験「Together Trial」におけるイベルメクチンの結果は効果なし(ただし公開・査読前)

まず、Los Angeles Times誌(https://www.latimes.com/business/story/2021-08-11/ivermectin-no-effect-covid)からの報告です。

イベルメクチンについてもNIHがスポンサーとなりカナダのマックマスター大学監督の元、ブラジルで実施されている大規模臨床試験で研究が進められている「Together trial」において8月6日のシンポジウムで研究者のエドワード・ミルズが発表しました。Together trialという試験については既存薬で治療効果が無いかを探す試験となっており過去にあのドナルド・トランプが奇跡の薬と言ったヒドロキシクロロキンなどもこの試験の結果で効果なしという結果が出ています。

以下に一部抜粋で詳細を記載します。

「救急外来で経過をみるか入院で経過をみるかに問わず1500人の患者に投与され、様々に言われて信じられてきた治療による利益が見られなかったといいました。

この研究結果はまだ公開されたり、査読の段階にありません。

SARS-CoV-2の治療薬として利用されるようになったのは、2020年にオーストラリアの研究者たちが発表した論文から原因となるSARS-CoV-2ウイルスに対して、非常に高い濃度で一定の効果を示すことがわかったからでした。しかし彼らの研究では、人間の体内では達成できない、あるいは許容できない濃度の薬剤を使用していました。

イベルメクチン擁護派には反ワクチン主義者や陰謀論者が多く含まれており、イベルメクチンの真実はCOVIDワクチンから得られる多額の利益を得たいと考える製薬業界によって隠蔽されていると主張している。しかし問題なのは、イベルメクチン擁護派が引用した科学的試験は、証明するにはあまりにも小規模であったり、記録が不十分であったりすることである。最も顕著な治療効果を示したエジプトでの大規模な試験は、盗用やデータの偽装が指摘され、出版社から取り下げられました。

ミルズ氏によると、彼のチームが行ったイベルメクチンの試験は、擁護団体から「控えめすぎて期待した結果が得られない」という苦情が寄せられたために変更されたという。この試験では当初、今年1月にイベルメクチンを1回投与した場合の結果を検証していましたが、その後、患者の体重1kg(約2.2ポンド)ごとに400μgの薬剤を1日1回、3日間投与することに変更され、最大で体重90kgの患者までの投与となりました。半分の被験者にはプラセボ錠が投与されました。ミルズ氏によると、いずれの投与量でも臨床的な結果は検出されませんでした。」

イベルメクチンを通常使用する場合、糞線虫や疥癬に対して体重1kgあたり200μgを投与することになっており、糞線虫では2週間間隔で2回投与、疥癬では1回だけ投与します。

それを1回投与量を倍にしてかつ3回投与にしても有効な結果ではなかったということです。

このことでわかるのは推奨する方々での問題点としては誰も、イベルメクチンをどのくらいを投与したら効いてくれるのかわかっていないことです。

アメリカやイギリスにはイベルメクチンを推奨する団体があったりしますが、その容量の適切性は今の所、臨床試験では明確に効果が示されたものはありません。

ましてや通常量の2倍から3倍量となっており、大丈夫な人には大丈夫かもしれませんが、だめな人にはだめでしょう。それは事前に予測はできずロシアンルーレットのようなものです。

米国食品医薬品局(FDA)はイベルメクチンの使用に関して強く警告

米国衛生研究所(NIH)がイベルメクチンを推奨する団体との協議で治療ガイドラインにおける反対から中立に改定し適応外使用が認められた背景があります。しかし中立であるということは効果があると認めたわけではなく、効果を認めるだけのデータが足りていないことも意味します。

米国においては動物用のイベルメクチンを摂取する人まで現れ、高濃度であり他にも添加物があり中毒症状を起こしているようです。

そういった事態をうけてFDAはTwitterで8月21日に警告を出し、記事でも記載しています。

https://www.fda.gov/consumers/consumer-updates/why-you-should-not-use-ivermectin-treat-or-prevent-covid-19

FDAが挙げたポイントとして

  • FDAは人における新型コロナ治療や予防のためにイベルメクチンを使用することを承認していない
  • イベルメクチンの錠剤は寄生虫に対して使用する容量で承認されており抗ウイルス薬としての効果ではない
  • 大量に服薬することは危険であり、深刻な被害を引き起こす可能性がある
  • 処方箋を持っている場合は合法的な供給ルートから入手し処方箋通りに服用する
  • 動物用の薬を使ってはいけない。人間用に承認されたものと大きく異なる。

ちなみに合法的なルートで手に入れない場合、特に日本では個人輸入で手に入れた場合は偽物を掴まされる可能性もあります。

すでにメキシコでは偽イベルメクチンが出回っていることが報道されており、他にも予想されうるリスクとしては発ガン性物質が含まれていたり、そもそも毒性のある添加物が含まれている可能性も否定できません。

また日本においては医薬品副作用被害救済制度というものがあり、適正な使用であれば障害の程度などに応じた救済制度が使用できますが、適応外使用では適正であったとは認められない場合にあたり救済制度が受けられません。

https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0001.html

イベルメクチン過量投与による副作用

最近の話題とは異なりますが、イベルメクチンを過量服薬した場合に起こりうる副作用を簡単に挙げておきます。

  • 消化器症状:嘔気、嘔吐、下痢、重度の肝障害
  • 循環器症状:低血圧
  • 皮膚症状:アレルギー反応(そう痒感や蕁麻疹)、顔や手足の腫れ、重度の薬疹
  • 神経症状:めまい、運動失調、けいれん、錯乱、昏睡
  • そして死亡です。

イベルメクチンを服用してみようと安易に思っている方、とくに海外の団体の推奨のように用量を多くして飲もうと考えている方は、この副作用を頭に刻み、冷静な判断をもって飲まないでくれることを祈ります。

正確にイベルメクチンが効いてくれると判断できる段階にあるのであれば、医師は手のひらを返して適切な量で治療を行います。多くの医師がそうしていないように、確たる証拠がない現状では推奨されません。

おわりに

イベルメクチンに関する最近の話題を紹介させていただきました。

結局は、適正な量がどのくらいで効果が出せるかが全世界的にはっきりと分かっていないことが問題なのが現状です。

今後も臨床試験は組まれていくでしょうから、正確な情報が出てきてくれることを待ちましょう。

我々も早期に介入できる薬を心待ちにし、治療のバリエーションが増えることで一人でも多くの方々に安寧が訪れることを望んでいます。

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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