mRNAワクチンで気になる話題:心筋炎/心膜炎

こんにちはDr.シェパードです。

以前に新型コロナウイルスワクチン接種前に知っておいたほうがいいことということで記事を書きました。

その時にはまだ報告があまり多くなかったのですが、最近気になる副作用の報告があったので記載しておきます。

以前にはアストラゼネカ社やJohnson & Johnson社によるアデノウイルスベクターを用いたワクチンで血栓症のリスクがあることは話題になり、記事にも上げました。

一方で日本で接種の進むファイザー/バイオンテック、モデルナによるmRNAワクチンではそこまで大きな副作用は報告されていませんでした。これは従来のワクチンと異なるタイプのワクチンであり、世界で初めての薬剤でまだ短期の副作用も頻度が稀なものは集積中でもあるからですが、一方で何億回と打ってようやく分かるほど頻度が少ない優秀な結果ということも言えそうです(アデノウイルスベクターのワクチンも同様です)。

そこで全世界的にワクチン接種が進む中で何万人で行った治験ではたまたま出てこなくても、症例数が何億回接種と莫大に増えれば報告が出てきて傾向がわかるようになることがあります。これらを市販後調査などで情報集積することで薬剤としての注意すべき稀に生じる副作用・副反応をさらに調べることになります。

目次

ポイント

  1. 新型コロナウイルスに対するワクチンで日本で認可されていものは執筆現在(2021/6)、mRNAワクチンとアデノウイルスベクターワクチンがある。
  2. アデノウイルスベクターワクチンでは稀ではあるが血栓症の報告があり現在様々な報告があがってきている
  3. mRNAワクチンでは最近、若年男性で2回目の接種後に心筋炎/心膜炎を起こす可能性が稀ではあるが報告があがっており、今後引き続き報告が待たれる状況。転帰は比較的良好とのこと。
  4. 一方で頻度は稀(現在:100万人あたり13人程)であるため、現在のところワクチン接種と感染した場合を比較したリスク・ベネフィットでは接種のほうが優位性がある結論。

mRNAワクチンの概要

詳しく説明したのは以前の記事にあります。

2021年6月現在でmRNAワクチンはFDA(米食品医薬品局)の正式承認は得ていません。正式承認のためには厳格な基準をクリアする必要があり、それには時間がかかります。そのため薬剤の使用開始の緊急性が高い場合に、治験によりエビデンスが十分にありベネフィットが潜在的リスクを上回ると考えられたときに緊急使用許可(EUA)を認めることがあり、新型コロナウイルスワクチンについてはEUAによる使用です。メリットは薬剤使用が早期に可能なことでリスクの抑制に役立つこと。デメリットは使用許可期間を過ぎた場合に市販が出来ないことです。治験をやっていないなどといったデマは情報を仕入れようとしない方々が言っていることになります。

副反応としての心筋炎・心膜炎

そして今回mRNAワクチンにおいて気になる副反応が報告されましたそれが若年男性に生じる心筋炎/心膜炎です。CDCに記載があります。

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/safety/myocarditis.html

実際には新型コロナウイルスに感染した場合でも頻度は稀ですが心筋炎を起こすことがあると報告があります(アスリートを調べた結果で偏りはあります:Curt J, et al. JAMA Cardiol. 2021 May 27. )。また小児では川崎病様の心筋障害をきたしたりすることもあります(Elizabeth M, et al. NEJM. 2020; 383: 347-358)。そのため新型コロナウイルスの特徴とも言えそうです。

頻度は現在のところ100万人あたり13人と稀に当たると考えられますが、急性心筋炎は一般的な発症(ウイルス感染による)では命に関わることのある疾患です。一方でこのワクチンによる副反応では軽微なことが多いようで重症化せずに回復している傾向が見られるようです。

詳しくお伝えすると、6月11日基準で約3億回分接種されたうち、心筋炎・心膜炎の発生件数は1226件の報告があり(100万人あたり12.6人ほど)、特に2次接種後の12-39歳の若い男性に見られる確率が高かったとのことです。

mRNAワクチン(ファイザー/バイオンテックやモデルナ)接種後に、特に40歳までの若年男性では胸痛や息切れ、動悸などの症状があった場合には早期の医療機関受診が良いでしょう。

最後に

今回は最近報告があがってきており、私も気になったmRNAワクチンの副反応について取り上げました。幸いにも経過は良好なことが多いとのことで、対象となる方は症状に気をつけて該当する症状があれば早めの医療機関受診が良いでしょう。

今回の副反応に関しても新型コロナウイルス感染でも起こりうるものになり、感染で起こった場合は重篤になる可能性もあります。副反応ばかりを気にして新型コロナウイルス自体に感染することで起こる様々なリスクを忘れてはいけません。メリット・デメリットを考えて、ワクチン接種を考えるようにしましょう。

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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