Novavaxワクチンの第3相試験結果

こんにちはDr.シェパードです。

本日は木曜日ということで論文紹介をします!

今回は日本で問題となっているワクチン供給不足問題解消に役立つかもしれない、新しいワクチンの第3相試験結果がでたためご紹介します。

NEJMオンライン版の2021年6月30日号に掲載されました(PT Heath. NEJM. 2021. Jul 30)。

健康成人への遺伝子組み換えナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373(米国Novavax製)の2回接種はプラセボと比較して、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染予防の有効率が89.7%と高率で、B.1.1.7変異株(α株)にも同程度の効果を有することが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のPaul T. Heath氏ら研究グループが実施した「2019nCoV-302試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年6月30日号に掲載された。

目次

ポイント

  1. Novavax社製の新型コロナウイルスワクチン(NVX-CoV2373)の作用機序は今までのワクチンと異なる新しい作用機序を持つ。
  2. NVX-CoV2373は第1相、第2相と安全性の評価に問題なく今回の第3相試験の結果、有効率は89.7%と報告された。
  3. 報告された副反応は、他のワクチンと同様であった(もちろん稀な副反応は検知できていない可能性がある)
  4. 有効性には申し分なく、これからの実用に期待される。

Abstract

Background

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する組換えナノ粒子ワクチンであるNVX-CoV2373ワクチン(Novavax社)の研究から得られた初期の臨床データによると、このワクチンは安全であり、健康な成人被験者において強固な免疫反応を伴うことが示された。しかし,このワクチンの有効性、免疫原性、安全性については、より多くの人を対象とした追加データが必要。

Methods

2020年9月28日~11月28日の期間に英国の33施設で実施された第3相無作為化観察者盲検プラセボ対照試験では、18歳から84歳までの成人を対象(男性または非妊娠女性で、健康または安定期慢性疾患(多剤併用療法[HAART]を受けているHIV感染、心疾患、呼吸器疾患の患者を含む)の集団)に、NVX-CoV2373(遺伝子組み換えナノ粒子スパイク蛋白5μg+Matrix-Mアジュバント50μg)またはプラセボの5μgを21日間隔で2回筋肉内投与することを1:1の割合で割り付けた。有効性の主要評価項目は、ベースライン時に血清学的に陰性であった参加者において、2 回目の注射から少なくとも 7 日後に発症し、ウイルス学的に確認された軽度、中等度、または重度の SARS-CoV-2 感染であった。

Results

合計 15,187 名の参加者が無作為化を受け、14,039 名が per-protocol 有効性集団に含まれた。全体の年齢中央値は56歳(27.9%が65歳以上)、94.5%が白人で、48.4%が女性であった。44.6%が、米国疾病管理予防センターの定義で重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスク因子とされる併存疾患を1つ以上有していた。感染が報告されたのは、ワクチン群では10名、プラセボ群では96名で、症状の発現は2回目の注射から7日以上経過しており、ワクチンの有効性は89.7%(95%信頼区間[CI],80.2~94.6)であった。ワクチン群の10例のうち、入院や死亡は報告されなかった。重度の感染症が5例報告されたが、いずれもプラセボ群であった(入院1例、救急診療部受診3例、自宅療養1例)。65歳以上のワクチン有効率は88.9%(95%CI:12.8~98.6)であった。事後解析の結果、B.1.1.7(またはα)変異体に対する有効性は86.3%(95%CI、71.3~93.5)、B.1.1.7以外の変異体に対する有効性は96.4%(95%CI、73.8~99.5)であった。

非自発的な報告による局所的有害事象(痛み、圧痛、紅斑、腫脹)の頻度は、初回(57.6% vs.17.9%)および2回目接種(79.6% vs.16.4%)ともワクチン群で高く、全身性有害事象(頭痛、疲労、悪心・嘔吐、倦怠感、筋肉痛、関節痛、体温上昇)も、初回(45.7% vs.36.3%)および2回目接種(64.0% vs.30.0%)のいずれもワクチン群で高かった。

自発的な報告による有害事象はワクチン群で多かった(25.3% vs.20.5%)が、重篤な有害事象(0.5% vs.0.5%)、接種中止の原因となった有害事象(0.3% vs.0.3%)、COVID-19でとくに注目すべき有害事象(0.1% vs.0.3%)の発現率はいずれも両群で同程度で、頻度は低かった。また、反応原性(reactogenicity)は全般に軽度で一過性であり、反応は高齢者で頻度が低く、より軽度で、2回目以降に多かった。

Conclusion

成人被験者に NVX-CoV2373 ワクチンを 2 回接種したところ、SARS-CoV-2 感染に対して 89.7%の防御率が得られ、B.1.1.7 変異体に対しても高い有効性が示された。

補足:Novavax社製ワクチンの原理

ウイルスの構成成分である抗原タンパク質を昆虫細胞などで作り、単離・精製することでできるワクチン(遺伝子組み換え技術により作成されています)。遺伝子組み換え蛋白ワクチンという分類にあたります。mRNAワクチンで体内に入れるmRNAが設計しているのがウイルスの抗原蛋白であり、Novavax社のワクチンではmRNAワクチンにおいて体内で作られた後の物質をすでに他の動物に作ってもらって体内に注入することで体に学習してもらい免疫を獲得する方式です。ワクチンの効果が低いこともあるため効果を高めるアジュバントという成分を追加します。これまでにB型肝炎や子宮頸がんワクチンにも用いられている方式です。

コメント

今現在主流のmRNAワクチンと比較しても遜色なく、有効率としてはmRNAワクチン(ファイザー/バイオンテック、モデルナ)>遺伝子組み換え蛋白ワクチン(Novavaxワクチン、塩野義製薬)>>ウイルスベクターワクチンといった状況です。

mRNAワクチンの有効性の高さ、ウイルスベクターワクチンの副反応や有効性の低さから現在mRNAワクチンの供給に影響があり、そこに割って入るのがNovavaxになります。日本でも使用に可能になれば、より感染制御が進みます。

気になる点といえば、開発まで時間がかかった理由として適切な免疫力をもたせるタンパク質の精製に手間がかかることで変異株へ対応するためには再度作製に時間がかかる可能性があります。一方でmRNAワクチンは比較的自由に対応できるので変異が出てきたとしてもバージョンアップが容易と考えられており実際に現在作製されています。今回の試験ではα株も含まれてはいますが、猛威を奮っているδ株は含まれていません。実際の有効性は今後リアルワールドではっきりしてくるでしょう。

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この記事を書いた人

首都圏で消化器内科医として臨床に携わり、消化器内科や医学一般について、医療者の生活についてなどの情報を発信しています。

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