こんにちは、Dr.シェパード (@dr-shepherd-ns-rabbit) です。
晴れて医師国家試験を合格し4月から医者となった皆さん、おめでとうございます!!
今回は研修医におすすめの本をご紹介します。
病棟で研修医の先生と診察などを行っているとよく
どんな本で勉強したら良いですか?
と聞かれます。実際に国家試験に向けた勉強と実臨床では必要な知識が違い、焦ることも少なくありません。
実際に私もかなり戸惑い数ヶ月は怒られたりしていました。そんな中で活路を見出すことができた本を紹介していきます。
私と同じように不安を抱えている新人医師の方々に、このページを参考にして勉強していき素晴らしい研修生活を送っていただき一人前にみなさんがなれる手助けをしたいと思います。
紹介するのはまずおさえておきたいと考えられる医師の根幹をなす分野、「一般的な内科診療」、「救急外来」、「輸液」、「心電図」、「抗菌薬」の5分野に分けて本を紹介します。
もちろん他にも各科での本なども必要となりますが、すべての根幹となりこれで勉強すればまず大丈夫!というものを紹介します。
注)オススメが多すぎて併記してあるものはどれか一冊でもよいというくくりにしています。
本選びのポイント
- 研修医にオススメする本のパターンとしては3種類:ポケットマニュアル、読んで学ぶ本、辞書として参照するための本
- 最近は様々な本があるため、読みやすいものを選択するのが一番!薄めの本からでもまずは1冊通読
- 基礎的な今回紹介する本とスーパーローテートで各科の本も購入する場合があるでしょうから、無理のない範囲で揃えていきましょう
一般的な内科診療に役立つ本 5選
ヤバレジ step1 だれもが最初はヤバレジだった/内科レジデントの鉄則
1つ目に紹介するのはタイトルからして手に取るのを躊躇させられるこの本「ヤバレジ だれもが最初はヤバレジだった」です。実は私の臨床への第一歩となった本ですごくお世話になったので最初に紹介します。
有名なシリーズで元々は「デキレジ」というシリーズでstep2まであり、その次に「ヤバレジ」、「チーレジ」が出されました。有名な聖路加国際病院内科チーフレジデントから出ている本の一つです。
他によく紹介される本に「内科レジデントの鉄則」があります。
自分はヤバレジじゃない!と自尊心高く「デキレジ」から読むのも良いのですが、謙虚にヤバレジからが実はおすすめです。
字体や行間が読みやすかったり、最初の一歩になるような内容が記載されており、会話形式のため流れるように学習できます。
読み比べるとわかるのですが「内科レジデントの鉄則」と内容がかぶるため、そちら一つでいいじゃないかと思うかもしれませんが、とっかかりやすさが上であり1番目のおすすめにさせていただきました。
成書を真面目によむのが苦じゃない方は「内科レジデントの鉄則」を、とりあえずの取っ掛かりを作りstep upをするならヤバレジをおすすめします(ちょっとお値段がはってしまうのでお財布と相談しましょう)。
入門としてはヤバレジ、デキレジを読めば十分かと思いますが、よくみると気づきますが被りがあります。すべて読むのが良いですが、大まかなところで被りがなく読むにはヤバレジstep1・2、デキレジstep2を読むと被りが少ないです。
全部を買ったら「内科レジデントの鉄則」の値段を超えてしまうので本末転倒な気もしますが読みやすさがとても良いです
Hospitalistのための内科診療チャート
有名なBlog「Hospitalist~なんでも無い科医の勉強ノート~」の方が書かれている神本です。
様々な科の比較的majorな疾患について圧倒的エビデンスをもって診療するための参考書となります。EPOCなど研修医を終了するときや専門医を取るときに必ず疾患に関するレポートを書く機会がありますがその際にも非常に参考になります。
病棟患者の診療で困ったことがあり、この本に載っている場合は参考にして対応すれば、上級医から一目置かれること間違いありません。
研修医のときにほしかった・・・(泣)今も愛用できるほどのボリュームです
総合内科診療マニュアル、ワシントンマニュアル
Pocketマニュアルとして網羅的な内容を一つ持っておいてもいいと思います。
いずれもポケットに入れるか悩むサイズですが(苦笑)。
「総合内科診療マニュアル」は純国産を謳っており、実際日本での実臨床に即したマニュアルになっていて使いやすいと思います。発刊当時は一冊でしたが、アップデートされて2冊組になっています。
まず購入するなら赤本です!どちらも持っていても損はありませんけれども!
ワシントンマニュアルは有名な海外産マニュアルで辞書みたいです、ポケットに入れる猛者は見たことありません(笑)。日本での実臨床に即さない事も部分的にはありますが問題なく十分な内容です。好みに応じて選択するのが良いでしょう。UCSFマニュアルなどもありますが、自分はあまりうまく使えず、初期研修終了とともにどこかに行きました、スミマセン。
救急外来にオススメ5選
当直ハンドブック/当直医マニュアル
最近出たハンドブックがとても良かったので紹介します。こちらの「当直ハンドブック」は2021年3月22日に発刊されました。内容は非常に多岐にわたっており網羅されています。
消化器だから悩むのかもしれませんが女性の急性腹症関連に関してもしっかり書かれており、初期研修医ならびに後期研修医以降でも当直の際に役立つと思います。
このマニュアルは研修医のときに欲しかった・・・(泣 2度目)
ハンドブックサイズでスクラブのポケットに入るのでとても良いです。他に「当直医マニュアル」という毎年更新されているハンドブックもあり、こちらもおすすめです。
救急外来 ただいま診断中! /救急外来, ここだけの話 /研修医当直御法度 赤・青
これらは知識のup dateに普段の読書で使用する本としておすすめです。
「救急外来 ただいま診断中!」は頻度の高い主訴や症候をわかりやすい語り口で説明している良書で最初の一歩としてもオススメです。
定番の「研修医当直御法度」の赤本、青本もおすすめです。当直の読書として青本を呼んだ翌日に、腹部外傷の軽症に見える小児が実は膵損傷で、受傷機転から膵損傷疑いを上級医に上申して診断したことは記憶に残っています。
最も新しい本で内容もかなり充実しているのは「救急外来、ここだけの話」でかなり重厚感がありレベルも高いです。研修医だけでなく後期研修医、専門医の先生方にまで救急外来に携わる機会がある全ての方におすすめできます。
番外編:血液ガスの読み方に2選→竜馬先生の血液ガス白熱講義 150分 / やさしイイ血ガス・呼吸器管理
血液ガスの読み方はどんな科に行こうとも身につけておきたい項目になります。
特に救急外来で活用することは多いでしょうから、こちらに載せておきます。おすすめは2つです。
やはりひとつ目はDr.竜馬先生の「竜馬先生の血液ガス白熱講義 150分」です。Dr.竜馬先生(本名:田中竜馬先生)は米国で活躍されている呼吸器内科および集中治療専門医の方です。私が紹介するのも恐れ多いほどの尊敬している先生です。集中治療関連の本も多数出版されており、そちらもまたすべてオススメです。非常にわかりやすく読みやすいことが共通しており全シリーズ手にとってもいいくらいです。
もう一つは「やさしイイ血ガス・呼吸器管理」です。こちらは人工呼吸器管理とともに記載されており1度で2度美味しいといったら失礼ですが、非常にわかりやすく読みやすいです。こちらは島根大学の長尾大志先生がかかれており、「やさしイイ胸部画像教室」という本のほうが有名かもしれません。同様にとても読みやすく、おすすめです。
輸液にオススメ3選
入門書としてよく出される羊土社さんの「輸液ができる、好きになる」という本がありますが、結構読み応えがあり、最初に読むには骨がありますし、私はまず嫌いになりました(笑)。
すこしわかってきてから読むと面白さがわかりますので入門書としては中々おすすめできません。
レジデントのためのこれだけ輸液/輸液を学ぶ人のために/(研修医のための輸液・水電解質・酸塩基平衡)
自分は「研修医のための輸液・水電解質・酸塩基平衡 」で学びました。内容は入門から中級ほどですが図解や文章がわかりやすく、電解質異常などもカバーしており、それぞれの章からでも勉強がしやすいです。そして珍しいですがCaやMgについてもカバーしていて消化器内科医として嬉しい限りです!(重症急性膵炎の高度低Ca血症やEGFR-TKIのパニツムマブで低Mg血症となるなど案外遭遇します)
今でも時折愛読しています。しかし、調べてみるとすでに2015年発刊と古くなってきておりAmazonでは中古品のみ!!!急遽というわけでは無いですが、新しく発刊されたものを紹介します。
「 レジデントのためのこれだけ輸液 」は初期研修医の初めとしても最適で、各電解質異常までカバーしています。
こんな本が研修医の時にほしかった・・・(泣 3度目)
また本としては内容量が少なく読みやすいですが十分な内容となっているのが「輸液を学ぶ人のために」です。いずれかを読んでみて入門書として一つ読んでみてはいかがでしょうか。
より理解を深める!体液電解質異常と輸液
入門書として最初から読むと心が折れます。内容は非常に専門的でマスターすれば専門医並みか以上の知識が身につきます。
非常に素晴らしい本で徹底的に学びたい!という意欲あふれる方におすすめです。
心電図にオススメ3選
心電図は未だに難しく苦手意識が拭えませんが、必ず勉強すべき項目です。なぜなら様々な科において心電図は切っても切れない関係になります。病棟当直をしているとき、重症患者を管理しているときなどさまざまな場面で必要になります。必要最低限の知識を研修医のうちに身に着けておくと気持ちが楽になると思います。
レジデントのためのこれだけ心電図/心電図のみかた、考え方
読み物としては「レジデントのためのこれだけ心電図」、「心電図のみかた、考え方」は通読しやすく初学者におすすめです。
心電図はとても好きな人なら問題は無いと思いますが、苦手意識がある人も多いと思いますので、取っ掛かりやすさが大事かと考え、こちらはとっかかりやすい本です。
心電図の読み方 パーフェクトマニュアル
さらにステップを進んだところに「心電図の読み方 パーフェクトマニュアル」があります。こちらは網羅的に波形と病名が載っており、通読するにはなかなか単調で大変なので、循環器内科をローテートしたときに出会った実際の症例と見比べつつ、似た波形の疾患などを前後して分野ごとにすこしずつ見たり、振り返るのに役立ちます。
感染症にオススメ5選
感染症も本が沢山あり非常に悩ましいところです。実際には色々な本を読まれるのが良いと思います。感染症は心電図以上に臨床医をやるなら切っても切れない関係になります。
岩田健太郎先生の本もよく挙げられるのですが読み物としてはイイのですが知識として使用するには一つ上の段階で初学者には活用できませんので挙げませんでした。
感染症まるごとこの一冊 /絶対わかる抗菌薬はじめの一歩
実臨床としての第一歩には「レジデントのための感染症マニュアル」は重すぎる(物理的にも)ので、通読するという視点では矢野晴美先生の「感染症まるごとこの一冊」や「絶対わかる抗菌薬はじめの一歩」がおすすめです。どちらもやや古い本ですが感染症は昔から変わらない基本がまず大事かつ抗菌薬の新規薬剤というのはほとんど出てくることがなく、都度アップデートでも良いかと思っています。そういった点ではこちらは最初の基礎から学べ読みやすいため、おすすめです。
レジデントのための感染症診療マニュアル
王道の本で臨床に携わる先生はほとんど持っていると言っても過言ではない本です。
こちらは辞書の使い方が正しいかと思います。もちろん読んでも良いのですがハリソン内科学並です。
最近第4版が出版され、COVID-19についての内容などがアップデートされました。生涯勉強という医師の鑑だと思わされたさすがの改訂でした。内容は非常に素晴らしく感染症治療などで困ったらこの本を開くといった使い方をしています。
日本語版 サンフォード感染症治療ガイド/感染症プラチナマニュアル
ポケットマニュアルとしてはサンフォード感染症治療ガイドまたは感染症プラチナマニュアルがオススメです。
サンフォード感染症治療ガイドは欧米での投与量での抗生物質の記載になっているため、日本で使用するにはやや多いと感じられる先生も少なくありません。
そのため日本でのマニュアルとしてプラチナマニュアルもあり、こちらを参照するのも良いかもしれません。
おわりに
今回は研修医の先生方に向けてオススメの書籍を紹介させていただきました。
臨床の基礎となる知識からピックアップしていますので、日々の診療に困る場面があった場合に参考いただければと思います。
大事なのはそれぞれの分野で一つの読みやすい本を通読することです。
一人前の臨床医として活躍できる助けになることを願っています。
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